● ギリシャ神話の不思議な世界~星座と神話

占星術という言葉に出逢うよりずっと前、星空を見るのが大好きでした。

小学生のころ、学校の図書室で、ギリシャ神話にも出逢いました。

星座は、神話の神さまたちの物語であることも、知りました。

そのストーリーが、星座の意味を支えているということが、とっても興味深かったのを覚えています。

中学生になり、占い雑誌を読むようになりました。

私たち世代にはおなじみの、マイバースディです。

その中のイラストで、12星座を見た時、何で、うお座の魚は2匹なんだろうとか、やぎ座の足は丸まってるんだろうとかが気になりました。

そんな時、神話の物語を思い出すことで、腑に落ちたのを覚えています。

12星座には、ひとつひとつ物語があって、その物語が、星座の質に大きく関わっている。

ますます、神話と星座の世界に、惹かれていきました。

 

おひつじ座

ギリシャ中部の地方の王アタマスと、彼の最初の妻であるネフェレーとの間には、ふたりの子供がいました。

息子のプリクソスと、娘のヘレです。

しかしその後、王はネフェレーと離婚し、新たにイノという後妻を迎えました。

イノは、やがてふたりの子を産みましたが、前妻の子である、プリクソスとヘレを、疎ましく思うようになり、ふたりの殺害を企てました。

これを知った生みの親ネフェレーは、たいそう悲しみ、ゼウスに、子供たちの命を助けてほしいと祈りました。

哀れに思ったゼウスは、金色の毛皮を持つ空飛ぶ牡羊を、子供たちのもとに遣わしました。

プリクソスとヘレは、この牡羊の背中に乗って、逃げ出すことに成功しました。

しかしヘレは逃げる途中、海に落ちて、死んでしまいました。

ひとり黒海の果てにある、コルキスにたどり着いたプリクソスは、この地で牡羊を、ゼウスに生贄としてささげ、その黄金の毛皮を、コルキスの王アイエテスに、贈ったのです。

王はこの毛皮を気に入り、森の木の幹に打ち付けて、決して眠らない竜に番をさせて守りました。

やがてプリクソスは、この地で王女を妻に迎え、5人の子供をもうけたといわれています。

この羊が天にあげられ、「おひつじ座」になりました。

そして海に落ちて死んだとされるヘレは、海の神ポセイドンによって助けられ、その後ポセイドンの愛人になったという話が伝えられています。

 

おうし座

おうし座の牡牛は、ゼウスがエウロペを誘拐した時に、変身した姿であると言われています。

エウロペは、フェニキア国王の、美しい娘です。

エウロペが、海辺で草を積んでいると、白く美しい牡牛が現れました。

牛はその場で座り、足をおってうずくまりました。

エウロペは、その牡牛が美しかったこと、と自身の好奇心で、牡牛の背中に乗ってみました。

すると牡牛が立ち上がり、そのまま、空を飛んで海を渡りました。

クレタ島に到着すると、牡牛はゼウスの姿に戻り、ふたりはそこで、愛を交わしたのです。

ゼウスは想いをとげ、エウロペとの間には3人の子供が産まれ、その内の1人がミノスで、やがてクレタ島の、王になりました。

このエウロペという名前が、後にヨーロッパの語源となったと、言われています。

この牡牛の姿が、「おうし座」になりました。

 

ふたご座

ペロポネソス半島にある国スパルタの王妃レダは、ある日、白鳥の姿をした、ゼウスにあざむかれて交わり、2つの卵を生み落とします。

ひとつの卵からは、兄カストルと姉クリュタイムネストラ、もう1つの卵からは、弟ポルックスと妹ヘレネの4人の子供が生まれました。

カストルとクリュタイムネストラ は、レダの夫、スパルタ国王テンダオレスの血を引く、普通の人間でしたが、 ポルックスとヘレネはゼウスの血を引き、不死の身体を持っていました。

カストルとポルックスの兄弟は、とても仲が良く、カストルは乗馬と軍事、 ポルックスは拳闘に優れた腕をもっていました。

ある時、叔父レウキッポスの娘をさらって、妻にしたことから、従兄弟である双子のイダス、リンケウスと争いになります。

戦いの最中に、カストルはイダスの放った矢に当り死んでしまいます。

ポルックスも、無数の矢傷を受けますが、ゼウスの血を引くポルックスは、不死の身体であったので死ぬことはありませんでした。

こうして、戦いには勝利したものの、ポルックスは、兄の死を嘆き悲しみました。

そこでゼウスに、自分も兄と同じ様に、死にたいと願ったのです。

ゼウスは仕方なく、カストルに、ポルックスの不死身性の半分を分け与え、 1日おきに天上界と人間界で、暮らすことになったそうです。

そして、やがてふたりは星となり、「ふたご座」になりました。

 

かに座

ヘラクレスは、ゼウスの息子ですが、愛人の子であったため、正妻であるヘラに、嫌われていました。

ヘラクレスを嫌っていたヘラは、 ヘラクレスに呪いをかけて、錯乱状態に陥れました。

錯乱したヘラクレスは、悲しいことに、自らの手で、愛する妻と子を殺してしまったのです。

悲しみと罪悪感から、立ち直ることができないヘラクレスは、罪を償うための12の試練(冒険)の旅に出ました。

12の試練の内で、2番目の試練に出てくるのが化け蟹です。

レルネー沼には魔物が住んでいるといわれていて、ヘラクレスが沼にさしかかると怪獣ヒドラが現れ、ヘラクレスの行く手をはばみました。

怪獣ヒドラは、9つの頭をもつ大蛇で、切り落とされるたびに、倍の頭が生えてくる、恐ろしい魔物でした。

さすがの英雄ヘラクレスも、 9つの頭をもつ大蛇には、悪戦苦闘します。

その上、ヘラはとどめをさすため、ヘラクレスのもとに、巨大な化け蟹を放ちました。

化け蟹は、ハサミをふり上げて、ヘラクレスの足元を攻めましたが、英雄ヘラクレスに、あえなく、踏みつぶされてしまいます。

この蟹の忠誠心を、哀れんだ神々は天に上げて、「かに座」にしました。

 

しし座

ヘラクレスが、犯した罪を償うための、12の試練(冒険)の内で、最初に戦ったのが、ゼウス神殿に現れる獅子でした。

この獅子は、ネメアの谷に、住みついていたといわれていて、デュフォンという化け物を父親に、エキドナという、上半身が女で下半身が大蛇という怪物を母にもつ獅子でした。

不死身の魔力を秘めていたとされています。

家畜の牛や羊を食い荒らし、時には、人間までも襲う、人食い獅子として、ひどく恐れられていました。

ある夜、ヘラクレスは獅子を見つけて、今にも飛びかかろうとする獅子に、すかさず鋭い矢を放ち、見事命中させますが、獅子の強くてしなやかな皮に、ヘラクレスの矢はまったく歯が立ちません。

太く堅い棍棒を、獅子の背に振り下ろすと、真二つに、折れてしまいました。

とうとう、素手で獅子に挑み、その首を締め上げ、やっとの思いで、倒すことができました。

ヘラクレスは、勝利の証として、分厚い皮を剥いで、自分の防具としてまとい、爪を武器になるように加工して使いました。

すると、ふりかかる災難を、次々と切り抜け、冒険を、無事成功させることができたと、伝えられていそうです。

神は、この獅子の強さを惜しみ、天空に上げその姿を「しし座」に変えました。

 

おとめ座

この女神は、豊穣の女神デメテル、またはその娘のペルセポネとの説があります。

ゼウスの妹デメテルは、穀物や果物、草花から地上に湧く泉まで、全てを支配していました。

デメテルには、1人娘のペルセポネがいました。

ある時、ペルセポネは、草原で花をつんでいると、 地底を支配している、冥土の神ハデスが現れました。

かねてから、ペルセポネに思いを寄せていたハデスは、彼女を、地底の宮殿に連れ去ってしまったのです。

母デメテルは、娘がさらわれたことを知ると、絶望のあまり、エンナの谷の洞窟にこもってしまいます。

すると、デメテルのいなくなった地上は、 春になっても草花は芽を出さず、1年中冬のようになってしまいました。

これを見かねたゼウスは、ペルセポネが、母の元に帰れるよう計り、冥土の食べ物を、一切口にしなければ、地上に戻そうと決めたそうです。

ペルセポネが戻ると、枯れた大地は見る見る生命を取り戻し、地上は再び緑に覆われました。

ところがペルセポネは、冥土のザクロの実を、4粒口にしてしまい、それを知ったゼウスは、1年の内4ヶ月は、冥土の神ハデスの元で、暮らすよう取り決めました。

それ以来、ペルセポネが、冥土に行く頃になると、地上に冬の季節が訪れるように、なりました。

この、デメテルとペルセポネの姿が、天に上がり「おとめ座」になりました。

 

てんびん座

てんびん座は、正義の女神アストレイアの持っていた、公平さと調和を保つ天秤です。

アストレイアが、このように働いていた時代は、最初は黄金の時代でした。

世界は、ゼウスの父クロノスによって、治められていましたが、いつも春のような陽気で、人々は皆裸で平和に暮らし、種をまかなくても、穀物は豊かに実り、川にはいつも牛乳やネクタル(神の酒)が、流れていました。

食べ物に困る者は無く、平和な世界でした。

最初に、争いが起こったのは、神々の世界でした。

それまで、世界を支配していたクロノスは、地下に追われ、 代わって、ゼウスが支配する、銀の時代を迎えます

ゼウスは、春を短くし、1年を春夏秋冬に分けたので、銀の時代がやってきて、四季が巡るようになると、人間達は家を建て、畑を耕すようになりました。

貧富の差、強者と弱者の差が、段々と多くなり、争いが起こるようになりました。

神々のほとんどは、人間に愛想をつかして、天界へ引き揚げてしまいましたが、アストレイアは望みを捨てずに、踏みとどまって、人間に正義を説いてまわっていました。

銅の時代になると、人間は嘘と暴力に染まり、剣を取って、親子兄弟や国同士で、戦争をするようになりました。

ここに至って、とうとう、アストレイアは、人間を見限って、天秤を持って、天に昇り、「てんびん座」になりました。

 

さそり座

オリオンは、巨大な体格と、たぐいまれな美しさを、持っていました。

彼は自分に、大変な自信があったので、地上の、あらゆる野獣を、射止めてみせると、大口を叩きました。

その力を封じるために、女神ヘラは、大サソリを、彼のもとへ送りこみました。

オリオンは、その大サソリに足を刺され、たちまち全身に毒がまわって、オリオンはその場で息絶えてしまいました。

この大サソリは、オリオンを殺した功にによって、空にあげられ、「さそり座」になりました。

一方、オリオンの方も、オリオンに好意を寄せる、月の女神アルテミスの願いで、星座にあげられオリオン座と、なりました。

今でもこのサソリを恐れて、さそり座が東に昇ってくると、慌てて西の地平線に沈み、決して同時に、顔を出すことがないのだと、伝えられています。

 

いて座

クロノスを父、水の妖精ニンフのピリュラを母として、産まれたケイロンは、上半身が人間、下半身は馬という姿で、生まれました。

このような姿で生まれたのは、クロノスが妻の目をごまかすために、馬となってピリュラに会いに行っていたためという説と、ピリュラが、海の神々のならいに従って、牝馬となって、受胎したためという説があります。

ケイロンは、生まれながらに、とても賢く、たくさんのことを学びました。

音楽・詩歌・予言などを司る神アポロンから音楽を習い、月・狩猟を司る神アルテミスから医術や薬草の栽培を学び、沢山の病人を救いました。

この馬人ケンタウロス一族が、英雄ヘラクレスと戦ったことがあり、その時、運悪くヘラクレスの放った矢が、ケイロンに命中してしまいます。

不死の身ゆえ死ぬことができずに、ひどく苦しみ、傷の傷みに堪えかねて、不死の身を、英雄プロメテウスに譲り、やっと死ぬことができました。

これを見ていた、ゼウスは、ケイロンの死を哀れみ、夜空に輝く星にし、それが「いて座」だと伝えられています。

 

やぎ座

森と牧羊の神パンは、上半身は毛深い人間で、頭には山羊の角と尖った耳があり、下半身は山羊という姿をしていました。

こんな姿のパンでしたが、とても陽気ないたずら好きで、山の洞窟に住み、森や谷川の妖精ニンフ達を、追いかけ回したりして、暮らしていました。

ある日、パンが、ナイルの河沿いを歩いていると、神々の酒宴に出くわして、得意の葦笛でみなを喜ばせていました。

すると、そこへ百個の首をもつ、怪物テュポンが、襲いかかってきました。

宴会は大混乱となり、それぞれが、自らの身を変えて逃げ回り、パンは慌てて、ナイル河に飛び込みました。

濡れた下半身だけが、魚の姿となり、上半身は山羊の姿で、逃げのびました。

そしてデュポンは「台風」という言葉の語源に、パンは「パニック」の語源となりました。

ゼウスは、その姿があまりにもおもしろかったので、天に上げ「やぎ座」として残されました。

 

みずがめ座

オリンポス山で、開かれる神々の酒宴で、ネクタル(神の酒)を注いで回る乙女は、いつもヘベでした。

ヘベは、主神ゼウスとその正妻ヘラの間に産まれた娘です。

そのヘベが、結婚するため、代役を探すことになり、候補に挙がったのは、トロイ国の王子で、全身が金色に輝く、美少年のガニメデでした。

永遠の美と若さを表す、金色に輝く体をしていたため、天上から見ていたゼウスも、一目で気に入ってしまいました。

ある日ゼウスは、鷲の姿に変身して飛んで行き、羊の番をしていた美少年ガニメデを爪にかけて、空高く舞い上がると、オリンポス山にさらってしまいました。

その時にガニメデが手に持っていたのが、 この水瓶です。

なので、その水瓶から、永遠に流れ続けているのは、水ではなくネクタル(神の酒)です。

それから、ガニメデが、オリュンポス山の酒宴で、お酌を勤めるようになり、その姿が天に昇って星座となり、「みずがめ座」になりました。

 

うお座

アフロディーテは、ゼウスと天空の女神ディオネの娘で、美と愛の女神として、知られています。

ある日、アフロディーテが、最愛の息子エロスを連れて、ユーフラテス河のほとりを、散歩している時のことです。

百の首をもつ怪獣、テュポンが、立ちはだかりました。

テュポンは、地の女神ガイアと、天空の守護神ウラノスを、先祖にもつ魔物です。

百個の頭の全ての目と口から、真っ黒な舌を出し、ライオンのように吠える、恐ろしい怪獣でした。

恐怖のあまり、愛の女神アフロディーテは、息子のエロスと一緒に、魚の姿に変身して、ユーフラテス河に飛び込みました。

こうしてふたりは、怪獣テュポンから逃れました。

二匹の魚の尾が、紐でしっかりと結ばれているのは、母と子の深い愛情の絆を、描いているそうです。

これには他の説もあります。

ナイル川のほとりで行われていた、神々の酒宴で、テュポンが現れたのは同じ。
 
けど、息子のエロスは、これをきっかけに、今までも結ばれていた見えない母とのリボンを解いて、自分の方向性を見出したいとするもの。
 
これも、興味深い。
 
ゼウスは、母と子の愛情を永遠に残すために、この2匹の魚を、「うお座」として天空に上ました。

 

12星座の神話いかがでしたか?

星座の神話がわかると、星座や天体に関する理解も、深まりますね。

ここには、ごく簡単に書いているので、興味があったら、ぜひギリシャ神話の本を、読んでみてくださいね。

違う説もいろいろあって、面白いですよ。

 

 

ギリシャ神話の不思議な世界~天体と神話