雪解け

未生希えみがおくる、魂に目覚める大人の占星術

生まれた時から
極寒の国で育った。
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温かいスープも毛布も
何もない世界。
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体を縮こまらせ
ただ、そこに立っていた。
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決まった道を
決まった速さで歩く。
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ちょっとでも間違えたら
頭上からナイフが飛んでくる。
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でも、生きるって
そういうことだと思ってた。

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ある日、雷が落ちた。
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深く覆われた雪に
亀裂が入ってしまうような。
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そこから、
今まで感じたこともないような
何かが降り注いでいた。
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身体中に張り付いた
氷の膜が溶かされていく。
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ボクを守ってくれていた
氷の膜が。
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ボクは、怖くて怖くて
仕方なかった。
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ボクを守るものが
ゆっくりと消えていく。
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ボクも、消えて
しまうのかもしれない。
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怖くて怖くて
氷の膜にしがみついた。
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けれど、雪の亀裂は
次第に大きくなり
それに、争うことなど
できなくなった。
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もう、受け入れるしかなかった。
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その得体の知れないものは
私の肌の色を
ブルーグレイから
ピンクに変えた。
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心地よさを感じる一方
とてつもない恐怖に襲われた。
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だって、今まで生きてきた
その在り方とは違うから。
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亀裂を帯びた雪は
段々と溶けていき
見たこともないような
色とりどりの世界が現れた。
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温かいスープが与えられ
ふんわりとしたベッドが
現れた。
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これは、どんな世界なんだろう？
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心地よさと未知への不安が
入り混じった場所。
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目の前には、沢山の道があり
自分で選ぶことができる。
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一本道を、凍えながら
恐怖に耐えながら
歩いた日のことを思い出す。
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あの頃のボクが
歩き続けてくれたから
今、ここに辿り着いた。
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暖かな日差しを受け
沢山の花に囲まれながら
道を選ぶ。
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ボク自身のために。
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