死神の脳内道路工事~生き残りたい、死にたくないという高速道路
未生希えみがおくる大人の占星術
バタバタと人が死んでいく。
世の中、どうなってしまったのだろう。
僕は、死にたくない、何とか生き残りたいんだ!
毎日そんなことばかり考えていると、ある日突然、死神が現れた。
「呼んだ?」
死神は不敵な笑みを浮かべた。
「いやいや、お前なんて呼んでないから。」
すると死神は、さらにこう続けた。
「だって、死にたくないって毎日言ってるだろ。」
僕は答えた。
「だから、死神なんて必要ないんだよ。あっち行けよ。」
僕は、死にたくない。
だから、死なないように、どうしたら死を避けられるのかを毎日考えて過ごしてる。
なのに、なんで死神なんかがやってくるんだ。
そんなことを考えていると、死神はため息をつきながら、呟いた。
「毎日死のこと考えてるだろ?だからだよ。勘弁してほしいよ。本当に寿命の人も連れて行かなきゃいけないのに、死を考え続ける人の道路工事まで任されて。働き方改革してほしいよ・・・」
「道路工事ってなんだよ?」
僕は死神に聞き返した。
簡単にまとめると、こんな感じだ。
死神は、死に関することをすべて担当している。
寿命が来た人を、連れていくほかに、いつも死のことを考えている人の、脳内の回路(思考回路)の、死に関わるものを、担当しているんだそう。
死の恐怖の回路ができると、何を見ても、どんな出来事に遭遇しても、死と直結して考えてしまうようになるらしい。
死にたいと思っても、死にたくないと思っても、死への恐怖は、すべてその回路を拡げる道具らしい。
「じゃ、その回路を狭くするには、どうすればいいんだ?」
僕がそう尋ねると、僕の質問には答えず、死神はこう言った。
「いつ死ぬかわからないから、未知の死が怖いんだろ?試しに、1週間後に、死ぬ前提で生活してみたらどうだ。お試しってことで。」
何だかおかしなお試しだけど、僕はその提案に乗ってみることにした。
普段は慎重なはずなのに、なぜかすんなり受け入れた自分にも、少し驚いた。
そして、気づいたらベッドの上にいた。
「なんだ、夢か・・・」
そう思いながら体を起こした僕は、カレンダーを見て目を疑った。
日付が、1週間先までしかないのだ。
慌ててスマホのカレンダーを見てみる。
そこにも、日付は1週間先までしかなかった。
「本当に僕は、1週間で死んでしまうのか?お試しってどういうことだ?」
そう思うと、急に怖くなった。
そして、今まで漠然と考えていた、死にたくないという思いとは、全く違う感情がやて来た。
僕には、まだやりたいことがある。
おもむろにノートを取り出し、この1週間でやりたいことを書きだし、実行に移した。
その気になれば簡単だったのに、やらずにいたこともあったし、行動を起こすには、勇気がいるものもあった。
だけど、1週間しかないのだ、迷ってる暇はない。
そうして、やりたいことにすべての時間を使っているうちに、約束の1週間がやってきた。
今夜で終わりなのかと思うと、眠る気にもならず、怖いというより、開き直ったような清々しい気分だった。
ちょうど0時になった時、死神が現れた。
いよいよ連れていかれるのかと覚悟を決めたとき、死神は微笑んだ・・・ように見えた。
「この1週間、どうだったか?」
僕は、この1週間を、どう過ごしてきたのか、どんな体験をして、どんなふうに感じたのかを、死神に話して聞かせた。
死神は、満足げな顔をしてこう言った。
「お試しは成功だな。」
どういう意味だ?と考えていると、死神は再び話し始めた。
「このお試し期間、死にたくないって漠然と考えるより、何かにチャレンジしただろ?人間は、自分の寿命は決めてるけど見えないようになってる。だから、いくら考えてもわからないことに悩むなんて無駄なんだ。頭の中の死の高速道路が広くなって、おびえるだけだからな。」
僕はうなずきながら聞いた。
「死にたくないなんて考えなくても、やりたいことを考えてると、自然に死の道路は閉鎖されていく。そして、希望という道路が少しづつ、拡がっていくんだ。」
死神はさらに続けた。
「出来事を希望の道路で解釈しても、死の道路で解釈しても、同じ時間なら、人生をどっちで生きたい?」
僕は、この1週間で希望の道路ができているのかもしれない・・・と思い始めていると、目の前から死神が消えていった。
気づくと再びベッドの上だ。
カレンダーは、12月までちゃんとある。
毎朝起きたら「今日は体調はどうだろうか?」「今日も安全に生きなくちゃ」と思っていた僕は、「今日はどんなことに挑戦しよう。」と思えるようになっていた。
あれから1年。
僕はたくさんの新しい挑戦をした。
体調が悪かったり、悲惨なニュースを聞くと、落ち込んだり、相変わらず死が頭をよぎることがある。
だけど、そこに引きずられなくなった。
死は、避けたり恐れたりするものじゃなくて、必ず誰にでもやって来ると受け入れるもの。
そして、その期限がわからないからこそ、今日を大切に生きること。
そんな風に思えるようになっていた。
もしかしたら、これが、死の高速道路が通行止めになって、希望の道路が、着々と建設されているってことなのかもしれないな。
そして、死は、死への恐れの道路の先にあるものじゃなくて、希望の道路のずっと先に見える、新しい景色なんじゃないかと思いながら、美しい夕陽を眺めていた。
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