お金が欲しい!お金が欲しい!お金が欲しい!

毎日毎日、お金のことばっかり考えてる。

もう、他のものなんて何もいらないから、お金が欲しい。

お金さえあれば、不安もなくて安心して過ごせるのに。

今日が給料日だっていうのに、今月も、支払いを済ませたらほとんど残らない。

お金が欲しい!

毎日そんなことばかり考えながら生活していた。

するとある日、「10億円さしあげます。」という看板を見つけた。

俺だってそんなにバカじゃない。

いくら、世の中には物好きがいるからって、10億円もくれる奴なんて、いるはずがない。

きっと、何かの詐欺の一種だろう。

そう思って通り過ぎたが、その看板は、翌日も翌々日も1週間後も、俺の営業ルートにあった。

毎日、違う道を通っているにもかかわらずだ。

その日俺はむしゃくしゃする出来事があって、つい、その店に入ってしまった。

受付では、感じのいい女性が対応してくれて、それだけでも、寛げる感じだった。

その後、面接官と名乗る人が現れた。

「確認ですが、10億円を差し上げて、衣食住にも困らない暮らしをお約束しますが、それで構いませんか?」

これが本当なら、こんな最高なことはない。

前金とか言われたら、何か理由をつけて逃げ出せばいいだけだ。

俺は、それでいいと返事をして、その面接官の後についていった。

「今日からここで、生活していただきます。あまり広くはありませんが・・・」

確かにそこは、1LDKで、広くはなかったが、ひとりで生活するには十分だったし、何より、今のボロアパートより、格段にきれいだ。

洋服はクローゼットに準備してあったし、食事は3食届けられるということだった。

簡単な説明を聞いた後、3日後にはここに引っ越してきていた。

仕事をしなくても、お金の心配がないなんて最高だ。

毎食届けられる食事は、どれも専門店や有名店のもので、おいしかった。

金庫には、見たこともないような札束の山が入っていた。

疲れ果てていた俺は、1週間の間、ほとんど食べるか寝るかのような生活をしていた。

快適すぎて、夢でも見ているんじゃないかと思って、何度もほっぺたをつねってみたいけど、どうやら嘘ではなさそうだ。

ゆっくり休養も取ったし、そろそろ何か始めよう。

旅行に行くのもいいし、船を買うなんてこともできるんだよな、なんて妄想にかられた。

まずは、近所を散策でもしてみようと、外に出ようとした瞬間・・・

火災報知機のような大きな音が鳴り響いた。

「家の外には出ないでください。」

アナウンスが鳴り響いた。

いったいどうなってるんだ?

全く理解ができないまま、再度玄関の扉を開けようとすると、火災報知機が鳴り響いた。

そんなことを数回繰り返していると、玄関から、あの時の面接官が入ってきた。

「困りますね。約束を守っていただかないと。」

俺はが呆然としていると、さらにしゃべり始めた。

「10億円と、衣食住に困らない生活を提供するという約束でしたよね。」

俺は、疑問に感じていることを伝えてみた。

「確かに、衣食住には困ってないし、お金ももらったけど、外出ができないんですが。」

すると、面接官はため息をつきながらこう言った。

「あなたは、10億円と衣食住に困らない生活と引き換えに、すべての娯楽や自由、人との関係を捨てたんですよ。」

「そんなこと聞いてない!!」

俺が叫ぶと、面接官は書類を差し出してこう言った。

「ほら、ここに書いてあるじゃないですか。『10億円と衣食住に困らない生活だけを受け取る』って。そしてあなたは、ちゃんと署名してる。」

「そんなの、聞いてない・・・」

「でも、お金があれば、他には何もいらないって、言ってましたよね。」

俺は愕然とした。

確かに、お金があれば、他には何もいらないと思っていた。

だって、まさか、こんな非現実的な世界があると思わなかったから。

「わかった。お金は使ってないし、今までの食費や家賃も払うから、ここから出してくれ。」

すると、面接官は再びため息をつきながらこう答えた。

「出られる方法がないわけじゃないんですけど、お金では無理ですね。あなたが、何のためにお金が欲しかったのか、お金を使って何をしたいのかを、レポートと絵にして、提出してください。それが認められれば、ここから出られます。」

「デスクの右の引き出しに、レポート用紙や筆記用具や絵の具など、必要なものは、入っていますから、ご自由にお使いください。明日、取りに伺います。」

そういうと、面接官は玄関を開けて出ていった。

俺はもう一度玄関を開けることを試みたが、やはり火災報知機が鳴って、無理だということを悟った。

それから俺は、何をしたいのかを真剣に考え始めた。

だってそうしなければ、一生この部屋に閉じ込められたままの人生を送ることになるからだ。

レポートを書いたり、絵をかいたりしながら、俺は子供のころに、自分で大きな家を作りたいと思っていたことを思い出した。

だけど、成長するにつれ、目の前の現実的な進路選択に悩まされることになって、夢のことなんて忘れていた。

10億円さしあげますって看板を見たときも、生活が楽になることしか考えてなかった。

だけど、もし、ここから出られるチャンスがあるとしたら、小さくてもいいから、自分で家を建ててみたい。

最初は犬小屋かもしれないけど。

そんなことを考えながら、ここを出たらやりたいことが、膨らんでいった。

 

あれからもう3年か、早かったな。

あの1LDKでの生活は何だったんだろう。

だけど、あの奇妙な出来事がなかったら、間違いなく俺は、会社や上司に文句を言いながら、お金に振り回される人生だった。

あの後すぐに、大自然を感じたくて訪れたキャンプ。

その時のご縁で、ここにログハウスを建てることになった。

もちろん、たくさんの人の助けもあったけど、自分でログハウスを作り、日々を忙しく働いている人の、憩いの空間を作ることができたのだ。

大きな夢がかなったのだ。

だからと言って、10億円を稼いでるわけじゃなく、相変わらず、支払いに追われることもある。

けど、3年前のあのころとは、全く気持ちが違うのだ。

自分のやりたいことをやって、豪華じゃないけどおいしいご飯が食べられて、仲間や家族と笑いあえる。

こんなにも充実した時間を、手にすることができるなんて思わなかった。

何のためにお金が欲しいのか。

そのお金を使って、何をしたいのか。

その夢があるだけで、世界は何倍にも、何十倍にも拡がっている。

ちなみに、今支払いに追われているのは、あの頃みたいに、生活するお金のためじゃなく、夢をさらに大きく実現するためのものだ。

お金にばかり執着しているときには、生活にも困っていた。

だけど、ある意味、ただ生きるためのお金を求めることをやめて、夢の実現のために行動することで、夢のためにお金が回り始めた。

夢のない未来のために、夢の持てない選択をするなら、未来の保証なんてなくても、自分がやりたいことに向かって行動したい。

俺は、この小さなログハウスで、そんな夢を若者に語りたいんだな、きっと。






Healing Space Cynthia シンシア
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