月の記憶とキロンとインナーチャイルド
みぶきえみです。
キロン(Chiron)の神話とその傷の象徴的意味を考えるとき、インナーチャイルドの視点を加えることは非常に有益だ。
キロンの傷が単なる物理的なものでなく、深い心理的・感情的なものであると理解することで、その癒しの過程もより明確になる。
そして、深い心理的・感情的な経験は、月の記憶の中に蓄えられている。
目次
キロンの出生とインナーチャイルドの傷
キロンの神話の中で、彼の本当の傷は出生時に既に存在していたと考えられる。
母ピリュラーは父クロノスとの交わりを拒絶し、キロンが生まれた後も彼を放棄した。
この二重の拒絶は、インナーチャイルドの傷を象徴している。
インナーチャイルドの傷とは、生まれてからの経験だけじゃなく、胎内にいるとき、そして出生時からの傷だといわれているからだ。
つまり、キロンは生まれながらにして深い心の傷を負っていた。
これは、受け入れられない、愛されないという感覚を生み出し、自己価値感の欠如をもたらす。
月の記憶とインナーチャイルドの傷
占星術において、月は過去の記憶、幼少期の経験、そして感情的な基盤を象徴する。
月の記憶は、インナーチャイルドの傷とも深く関連している。
キロンの神話における出生時の拒絶や育児放棄は、まさに月が示すような感情的な経験を表している。
これらの記憶は無意識の中に蓄積され、成人してもなお影響を与え続ける。
インナーチャイルドの傷とキロンの役割
インナーチャイルドの傷とは、幼少期に受けた心の傷だ。
これには、親からの愛情不足、育児放棄、虐待などが含まれる。
キロンは、まさにこうしたインナーチャイルドの傷を象徴する存在だ。
彼が負った「治癒不可能な傷」は、幼少期に受けた深い心の傷を意味していると解釈できる。
キロンの癒やし方とインナーチャイルド
キロンの神話からは、癒しのプロセスについても学ぶことができる。
キロンは、アポロンとアルテミスという神々に育てられた。
アポロンは、芸術、医学、予言などを司る太陽神で、アルテミスは狩猟と自然を象徴する月の女神。
なので、キロンは、これらをアポロンとアルテミスから、学んだといわれる。
これは、地上の親から拒絶されたとしても、宇宙的な存在(宇宙の父性と母性)から愛され、支えられることを意味している。
インナーチャイルドの癒しも同様に、自分を内観することで、宇宙とつながり、自分自身の内なる親(インナーペアレント)を育て、自己愛と自己受容を深めることが重要だ。
インナーチャイルドとキロンのアーキタイプ
キロンのアーキタイプを「孤児」と考えている占星家もいる。
これは、キロンが目立つ配置にある人々が、育児放棄や虐待などの「孤児」的な体験をすることが多いという。
実際に、孤児ではなくても、家庭が安らげる場所ではなかった、家族といても見放されているように感じた、誰も頼りにすることができなかったという、経験を持つことが多いからだ。
宇宙の叡智とインナーチャイルドの統合
キロンの傷は、インナーチャイルドの傷と深く結びついているが、それは同時に宇宙の叡智への扉でもある。
自分が最も傷ついている部分を通じて、宇宙の叡智と真理の世界への扉が開かれるということ。
キロンの軌道が土星と天王星の間にあり、「虹の橋」と呼ばれるように、これは物質的な制約を超えて、精神的な成長へとつながる橋渡しを象徴している。
インナーチャイルドの傷を癒す過程で、私たちは自己の深い部分と向き合い、そこから得られる洞察と叡智を通じて他者に奉仕することができるようになる。
それが、生まれてきた意味でもあり、人生の使命でもある。
月の記憶とキロンの癒しのプロセス
月の記憶は、過去の感情的な体験はもちろん、すべての経験を記憶している。
これらの記憶は、キロンの傷と密接に関連しており、癒しのプロセスにおいて重要な役割を果たす。
インナーチャイルドの癒しは、月の記憶の中にある、矢面に立ってきた自分と、抑圧してきた自分の統合を通して可能になる。
自己愛と自己受容を通じて、分離の傷を癒し、自己の完全性を取り戻すことができる。
キロンの神話とインナーチャイルド、そして月の記憶の視点を組み合わせることで、彼の傷が単なる物理的なものではなく、深い心理的・感情的なものであることが明らかになる。
キロンの傷は、幼少期に受けた愛情不足や育児放棄といった経験から、自己分離を起こしたインナーチャイルドの傷と重なり、その癒しは高次の自己との統合を通じて可能になる。
月の記憶を通じて、私たちは過去の感情的な体験を知っていて、私たちにメッセージを送る。
そのメッセージは、キロンの存在を通して伝えられ、私たちが自身の傷をどのように受け入れ、乗り越え、そして他者に癒しを提供する力に変えていくかを教えてくれるのだ。